竹中勝信

John Snow博士は、19世紀にロンドンにいたお医者さんで、コレラの発生源を疫学的に調査して、感染の拡大を食い止めた人である。疫学は、彼に始まるとも言われているくらいである。この当時、ロンドンの下町などは衛生状態がすごく悪く、劣悪な住宅環境で、一つの社会問題ないし環境問題でもあった。そういう時に発生したコレラであるが、この頃はまだコレラ菌は発見されておらず、博士は、社会調査的な手法で、コレラの発生源が、飲み水として利用されている井戸水だとつきとめたのである。その時期は1788年である。当時、ロンドンには、至る所に井戸が掘られていて、ポンプで汲み上げて使われ、同時に、汚物などの下水も、道端とか側溝に垂れ流し状態だったので、そういう廃水が井戸水に侵入し汚染したらしいのである。テムズ川から取水する上水道もあったようであるが、そのテムズ川もものすごく汚濁されていたのである。とにかく、下水道と上水道をはっきり分離する対策が必要だったのである。日本では19世紀になってコレラが流行したが、明治期に近代的な上水道建設の要望が出てきたのは、コレラ発生のためだったようである。産業革命を経て、近代的な都市ができてくるにしたがって、こういう都市環境の問題も起きるようになった。